seasons.(シーズンズ)【完】
「ちょっと、加奈ったらちゃっかりサボってんじゃないわよ」

「ごめんね~、でも聞いて!」


言うなり一枚のプリントを見せ付けてきた。

なになに、東雲学校祭フリーステージ参加者募集?


「生徒会が配ってたの!多分そのうちクラスにも配布されると思うけど~」


はしゃいで音符マークをちらつかせる加奈。


「加奈軽音部でしょ。アンタらにはもってこいの企画じゃないの」


と提案してみたら軽音部のためのステージは既に用意されているらしく、この企画にはあたしと参加したいとのこと。

その気持ちは素直に嬉しいけど。


「人材は揃ってるの?あたしはギターしかできないわよ?」


正式な入部さえしていなかったけど、加奈の部活には幾度となくお邪魔してギターを教わっていた。

だからそこそこ演奏はできるつもり。


「もちろん夏枝はボーカルだから大丈夫!加奈がベースで、うちの部のドラムの子が協力してくれるって~」

「もう一人は?」


バンドを組むならあとキーボードも必要のはずじゃ……。

そこも軽音部の子で補えるのかしら。


「……問題はそこなんだよね~」


と思いきやそうでもないのね。

部内のキーボードの子は軽音部の出し物として演奏する曲でいっぱいいっぱいらしい。

無責任なことはしたくないからと、丁重にお断りされたとか。

それでも加奈は相当真剣らしく、的確な人を見つけては声をかけてそれなりの努力はしてくれてたみたい。

キーボードがいなくても演奏が成り立たないわけではないけど、いるに越したことはないもんね。

どうしたものかしら。
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