seasons.(シーズンズ)【完】



直感で向かった3Dの教室。

ヨーロッパを意識した空間の隅っこで、冬香は発表衣装のまま体を折りたたんでいた。

ゆっくり近付けば気配に気付いたのかこちらを見て、


「なつ、ぇ……ちゃん……ど、ぅして?」

「アンタを探しに来たんでしょうが」


整った顔は涙でぐしょぐしょ。

目線を合わすため、あたしは冬香と向き合う形でしゃがみこむ。


「秋人くんに告られたんだって?」


率直に訪ねると、冬香は見開いた目からまた涙を零した。


「しかもフッたんですって?罰当たりなことしてくれるわ」


冬香はロクに目も合わせず体を強張らせている。

いつかの無愛想な冬香を思い出すから、そういうのはやめてほしいものだわ。


「アンタさ、秋人くんのこと好きなんでしょ?ま、冬香が惚れちゃうのもしょうがないわよね。秋人くんはこの芳賀夏枝が見込んだ男だもの。あれは好きにならない女の方がおかしいわ」


それなのに……、


「どうしてフッたのよ?」


訊ねるも冬香は口をつぐんだまま。

またこのパターンか、と諦めてこちらから話を進めようとしたら、鼻を啜る音のあとに冬香が喋りだした。


「……私、夏枝ちゃんを裏切りたくなかった」

「何その言い方。あたしが惨めみたいじゃない」
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