seasons.(シーズンズ)【完】
正直、同情されているみたいで腹が立った。

だけどそんなことより腹が立ったのは、両想いと分かっていながら冬香があたしのために身を引いたこと。

そうして秋人くんを悲しませていること。

流石にあたしだって事実には逆らえない。

現実を受け入れるしかないのよ。


「秋人くんが選んだのがアンタなんだもの。仕方ないわ」


すっと立ち上がり、身をひるがえす。

冬香には背中を向けたままあたしは話続けた。


「体育館倉庫の死角になってるところ」

「……ぇ?」

「秋人くんが待ってるから行ってあげて。そこでアンタの本当の気持ちをちゃんと伝えなさい」


冬香はだんまりでその場を離れる気配を感じさせなかった。

短い沈黙に息がつまりそう。


「何してるの?早く行きなさいよ」

「……でも、夏枝ちゃんのライブ見れなくなっちゃう」

「そんなのいいから!」

「だけど、」

「でももだけどもヘチマもない!」


お願いだから早く行って。

まだ秋人くんを待たせるってなら、この芳賀夏枝が成敗してやるんだからね!
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