seasons.(シーズンズ)【完】
「夏枝ちゃん……」

「何度言わせるの!?行きなさいってば!」

「――ッごめんね!」


あたしの横をすり抜けて、教室の外へ駆けていく冬香。

廊下から聞こえる足音が、どんどん遠ざかっていく。

それはあたしの幸せと比例している気がした。

まったく……こういう時は「ごめんね」じゃなくて「ありがとう」でしょ。

ほんっとーにお馬鹿なんだから。


「……でも、馬鹿なのはあたしも一緒か」


隙間風の音色があたしを嘲笑っているようにすら聴こえた。

まだ涙は出ない。
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