seasons.(シーズンズ)【完】
『メンバーは現役軽音部ベースの3C木村と~、』

『同じく軽音部ドラムの窪井、』

『3年F組委員長のキーボード山崎凛に、』

『東雲中学校なんちゃって歌姫、芳賀夏枝がギターとボーカルを担当させていただきまーす!』


出たぞ自称歌姫。

またコイツはよくも恥じらいなくそーゆーこと言えるよなぁ。


『ではではとりあえず聴いちゃってください!曲は“heart beat”』


けど歌姫っていうのも強ち間違っちゃいねーみたいだ。

掛け声の後、それぞれが位置について始まった演奏。

それに乗せたナツの誰もを魅了するようなパワー溢れる歌声は本物だった。

夏祭りの時といい修学旅行のバスの中でといい、こいつの歌はいつ聴いても心打たれる。

体育館内の生徒はみんな手拍子をしたり、体でリズムを刻んだり、弾けた演奏とナツの歌声にノリノリだ。

ただ少し気掛かりなことがあって、今回はいつにも増して元気のある曲だったにも関わらず、どこか妙な違和感があった。

そうだ。いつもなら伝わってくるはずのエネルギーが今日は感じられない。

それどころか悲しみに似たような感情が俺の心臓を叩きつけた。

どうしたんだよナツ?お前らしくもない。
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