seasons.(シーズンズ)【完】
「進藤に告白しなかったことは後悔してないのか?」

「してないわ」

「米澤に譲ったことは?」

「……してない」

「そうか」

「ライブの時も言ったでしょ?あたしの好きな人の幸せはあたし自身にとっての幸せでもあるの。だから秋人くんと冬香が幸せになれるなら……」

「ナツ」

「それに理想と現実は違うってことくらい承知してるしね。あたしそこまで子供じゃないわ」

「ナツ」

「さーて、また理想の王子様探さないと――」

「ナツ!」


俺はナツの両肩を強く掴み、強制的に顔を見合わせる体勢を作らせた。

向き合ったナツは唖然としている。


「……何のつもりよ?」


何のつもりだ?

お前こそ何だってんだ。

無理してらしくもない作り笑いなんて見せやがって。


「ナツ」

「だから何よ?」

「……泣いてもいいんだぞ?」


ややツリ目の瞳が大きく見開かれた。


「お前喜怒哀楽激しいけど哀の部分の表現下手だろ」

「ぅ、うっさいわね」

「辛い時は泣けよ。隣のよしみの仲の俺になら泣き顔見られても、どうってことないだろ。それともなんだ。慰めがお節介だっつーなら一人で泣かせてやらないこともねーけどな」

「…………」
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