seasons.(シーズンズ)【完】



「芳賀さん。少しお時間頂けますか?」


教室に着くなり、突拍子も無い秋人くんからのお誘いに心臓が跳ねた。

学校祭以降、気まずさがあってまともに顔を合わせていなかったから……。

連れて来られたのは屋上。

秋人くんとセットでつくづく縁のある場所ね。


「すいません。わざわざ屋上まで足を運んでもらって。周囲に見られて誤解も招くのも申し訳ないと思ったのです」

「それは平気だけど、いきなりどうしたの?」

「渡したい物がありまして」


そう言って秋人くんはポケットから取り出した何かを差し出してきた。


「……お守り」


それは紛れもなく、先日失恋の切なさと悔しさを込めて宙に踊らせたお守り。

どうして秋人くんが?


「下校途中に拾ったんです。芳賀さんの物じゃないかと思って」


タイミング的に多分……ううん、この鈴の剥げ具合も。

これは間違いなくあたしの物だわ。


「あ、ありがと……」

「知らぬ間に落としちゃったみたいですね。偶然でしたが僕が見つけてよかったです」


微笑む秋人くんからお守りを受け取る。
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