seasons.(シーズンズ)【完】
ここまで言っても彼は気付いてくれない。

「天然ボケとは厄介ですね」なんて自らのことを駄目出しした時は、いい加減呆れてしまった。


「あー、あんまり鈍感だからムカついてきたわ」


本当に。悪いけどイライラしてきた。

どうしてこうも思い通りにいかないのよ。

色々な想いが募ってもうヤケクソになっていたのかもしれない。

あたしは秋人くんの胸倉を思いきり掴み――、


「!」


顔を引き寄せて唇を重ねていた。


「……ほんと、鈍感すぎよ」


ゆっくりと顔を離しながら微笑み掛ける。

あまりにも突発的なあたしの行動に、秋人くんはメガネの向こう側にある瞳を丸くしていた。

そんな彼を置いて、あたしは一足先に屋上を出るべく扉へ向かう。


「ほら行きましょ!ホームルーム始まっちゃうわよ」
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