seasons.(シーズンズ)【完】
鞄からメモ帳を取り出すなり、俺の視界をさえぎるように目の前に押し付けてくるナツ。

シンプルなデザインのメモ帳には、カラフルなボールペンで雑然と書かれた文字。

正直見にくいし目に痛い。

端っこに申し訳なさそうに描かれたイラストは、理解するのに首を捻ってしまいそうなほど絵心を感じられないクオリティだった。

配色からして恐らくクリスマスツリーとサンタ、そしてこの茶色い物体はトナカイなのだろう。

真っ赤なお鼻と思われる赤丸が確認できる。


「クリスマス会のスケジュール!徹夜で練ったのよ!」


それで授業中受験生にあるまじき居眠りをしてるのだから、褒める気も失せる。

受験生としての自覚が足りないのは俺も同じだが、ナツの場合は公けに見てあからさますぎるのだ。

毎日楽しそうに生きてて何よりではあるが。


「駅のとこのカラオケに大部屋があるし、そこにしようと思って。持ち込みも可能だからそれぞれお菓子とか持ち合ってさ。金沢のリクエストで王様ゲームもやるわよ!」
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