seasons.(シーズンズ)【完】
「クリスマス会のメンツ揃えるのに、ハルもどんどん声掛けなさいよ」


参加条件として「ただしD組の彼氏彼女のいないフリーな奴ら限定よ」と付け足すナツ。

果たしてこれはあのカップルへの配慮か、自分の都合か。

真意は定かではない。

段々と校舎が大きくなるにつれ、道行く生徒の数も増えてきた。

向こうに山崎凛の姿を発見したがナツは気付いていないようだったので、やかましい事態に発展させないためにも、わざわざ教えるような真似はしないでおこう。


「そいやお前、あれから変な嫌がらせ受けてないか?」


“あれ”という指示代名詞が指す事柄は、例の教科書事件のことである。

あの時は今時小学生でもやらないような幼稚ないやがらせを、中学三年にもなってやる奴が身近にいたことに呆れたものだ。

ナツは短い間を置いてから、


「んー、平気」


メモ帳を鞄にしまいながら答えた。

それに対し「なら良いんだが」と返した俺だが、決して安心しきったわけではない。
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