seasons.(シーズンズ)【完】
もちろんナツのことは信用している。

だが同時に過大評価している部分があるのだ。

ナツは自分にとってマイナスな出来事を隠す傾向の強い性格で、実際にも周囲から見て明るく元気なキャラだと認識されている。

学校祭の時に少しだけボロを見せはしたが、基本的には人に気遣わせるようなことをあまり言わない。

それは、あんな辛い過去を背負っているとは思わせないような平然とした振る舞いにも、よく表れている性分だ。

しかしその一人で抱え込もうとする性格こそが危ういのである。

本人は周囲を巻き込みたくないと思ってそうしているのかもしれないが、見守っている立場としては偽られることの方が不安だし、結果的に惨事になる恐れもある。


「にしても寒いわね。学校まで走るわよー!」


突然駆け出したナツを追うことなく、俺は黙ってその背中が小さくなっていくのを見送ることにした。
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