seasons.(シーズンズ)【完】
アップにされた髪には派手な柄のシュシュ。前髪には大きなピン止め。

折られたジャージの裾から伸びる足は、マジックでカラフルに落書きされた上靴を履いている。

身なりを見る限り、いわゆるギャル系という部類だ。

球技大会にも関わらず薄化粧をしているのが決め手になった。


「あたしに用?」

「同じクラスの米澤さんが芳賀さんのこと呼んでたよ」

「冬香が?」

「体育倉庫で待ってるってさ。確かに伝えたからね」


さっさと言い終わるなり逃げるようにこの場を去ってしまった女子生徒。

米澤が倉庫に呼び出し……ねぇ。

しかもタイプもまるで正反対、面識もなさそうな女子を伝達係にしてまで。


「もーあの子ったら何してんのかしら。加奈の卓球も見たかったってのに。ちょっと行ってくるわね」


怪しいと思わないのかコイツは。

いかにも罠ですって雰囲気出てただろうが。

だが止める権利など俺には無い。

正しくは、止めても聞き入れてもらえないのが目に見えているのだ。
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