seasons.(シーズンズ)【完】
「とにかく出ましょう!決勝戦に間に合わなくなっちゃうわ」


けどそうは言ったって窓は無いし、出口はつっかえ棒で閉ざされたあの扉だけ。

さっきも考えた通り、誰かが通り掛かってくれることを待つしか策はなかった。

自分の言ったことに改めてしょげ返るあたしをよそに、近くにあったポールを手にする冬香。


「……ちょっと、何する気なの?」

「強行突破だよ」


背筋が凍った。寒いからじゃない。

冬香がらしくもないことを言ったから。


「やめなさいって!そんなことしたら器物破損で問題になるわよ!?」

「でも夏枝ちゃん試合があるんでしょ?早く行かなきゃ!」

「そうだけどやっても良いことと駄目なことってのがあるでしょう!?」


あたしが怒鳴っても冬香は止める気配を見せない。

大して力も無いくせに、ポールで扉を突き破ろうと必死だった。

ガン!ガン!と荒っぽい音が薄暗い倉庫の中に響く。

冬香の様子がおかしい気がして、あたしは怖くなった。
< 312 / 410 >

この作品をシェア

pagetop