seasons.(シーズンズ)【完】
人間は絶体絶命の窮地に追い込まれると人格が変わるって聞いたことがあるけど、それってこういうことなの?

そりゃあ試合には出たいけどこんなやり方間違ってる。

冬香にこんなことしてもらってまで、あたしは試合に行くべきなの?

でもそうしないとクラスメイトのみんなが困るじゃない。

あたしの脳内ではごちゃごちゃしたものが葛藤を起こし続けていた。

どうしようもなく頭を抱え俯いていると、


「開いたよ!」


とどめの一撃みたいな音に続いて、冬香の明るい声が耳に入ってきた。

うそでしょ!?まさかホントに!?

あたしはバッと顔を上げる。

扉自体に傷は目立つものの壊れていないことから、衝撃で運良くつっかえ棒が取れたらしい。


「ありがとう冬香!」

「いたっ」


感謝の意を込めて手を握りしめると、冬香は一瞬表情を歪めた。

先っぽが歪と化したポールを握っていた掌は、摩擦のせいかまめが出来て真っ赤になってしまっていた。

見てるだけで痛々しい。
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