seasons.(シーズンズ)【完】
「大丈夫だよ。私ずっとあっくんのそばにいるから」


頬を染めて目を泳がせる仕草に僕は理性が飛んだ。

冬香の顎にそっと手を沿え、こちらを向かせる。

もう片方の手は彼女の肩へ。

緊張しているのか彼女の体は強張っていた。


「……ぇ、あの……こんなところで?」

「暗くてよく見えないから平気ですよ」


彼女の瞳を捕らえると、恥ずかしそうにしながらも目を瞑ってくれた。

これはOKのサインと受け止めていいのだろうか。

僕はゆっくりと顔を近付けていき、そして――……、


「あ、雪だよあっくん」


重ねた唇が離れてから間もなくして、はらりはらりと冷たいものが降ってきた。


「幸せだね」

「はい」


体は寒くても心は温かな、そんな聖なる夜の出来事。
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