seasons.(シーズンズ)【完】
小学校高学年に上がっても、相変わらず一人教室の片隅で本を貪り読む日々は続いていた。
幽霊というあだ名を付けられ、机に落書きされたり靴を隠されたり……小学生特有の面白半分なイジメにも遭っていて、しばしば様子を見兼ねた先生が相談に乗ろうと私を呼び出してきたけど、全て「大丈夫」と笑っておいた。
だってこのことを先生を知られて、家族に伝わったりしたら困るから。
お父さんやお母さんに余計な心配かけさせたくなかったから。


「冬香、学校は楽しい?」
「うん!」
「みんなと仲良くやれてるか?」
「平気だよ。すごく楽しいもん」


だから私は嘘を吐いていたのだ。
良い方向に膨らませた虚言を並べる度、両親に真実を隠し続ける安心感と騙し続けている罪悪感が入り混じり、心が痛んだ。
それでも本当の自分を知られることの方が何倍も怖かったから、口を衝くのは偽造された学校生活ばかり。
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