seasons.(シーズンズ)【完】
アイツは常に愛人と呼べる男を数人取り巻きにしては、たんまり貢いでもらっているらしいからな。

でもこっちに越して来てから家に連れ込んでいるのを見たのは、さっきの男が初めてだ。

あの男とはそれだけ親密な関係になっているということか?

そもそも、アイツが家に帰ってくること自体が数少ないのだが。

しばらくして隣の部屋から女の喘ぎ声が聞こえてきた。

言わずともそういうことなのだろう。

これも昔からで、いい加減慣れた。

アイツも相手の男も、子供の俺なんかいないも同然に気を遣ったりはしない。

耳につくウザったさを掻き消すため、古いラジカセに手を掛ける。

ラジオチャンネルを回し、無難なリクエスト式音楽番組を選んだ。

アイツが男に貢いでもらった金で生活するような、汚い生き方から足を洗ってくれないかと密かに願ってはいるが、この有様じゃ到底無理なのかもしれない。

俺に特別大きな害があるわけじゃないんだ。

一人立ちできる日がくるまで、もうしばらくはアイツの子供としてすがりついていたい。

そう思っているから、俺はアイツの生き様にあえて文句をぶつけなかった。
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