seasons.(シーズンズ)【完】
『今日はクリスマスですね。我が子がとても高価なおもちゃを欲しがっていたので思わず奮発してしまい財布共に涙目の僕ですが、子供の喜ぶ笑顔を見ているとまた頑張って働こうと思えるんですよね。これからも一家の大黒柱として日々精進しようと思います。そこでリクエストなんですが――』


音質の悪いラジオから流れてきた、リスナーの言葉に反応してしまう。

プレゼントねぇ……。

今夜、世界中の子供達のもとへサンタ――親がプレゼントを届けるのだろう。

俺はガキの頃からサンタクロースの存在を信じちゃいなかった。

別にマセていたわけじゃない。

本当は俺だって健全なお子様として、赤ひげのおっさんに夢を抱きたかったさ。

けどクリスマスプレゼントを一度も貰ったことの無い俺には、無茶な要求だったのだ。

アイツはいつも客から貰ったケーキやらオードブルやらを持って帰ってくるくらいで、おもちゃとか年齢相応のプレゼントなんてくれる素振りさえ見せたことがなかった。
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