seasons.(シーズンズ)【完】



居るに堪えなくなった俺はそっと家を出て、行く当てが無かったので町内の公園に来た。

砂場に滑り台にブランコ、それにベンチが二つしかない、ちっちゃな公園だ。

浅く積もった雪をはらって、ベンチに腰を下ろす。


「つめてっ」


尻から体中に伝わるひんやりとした感触に身震いした。

吐く息はまるで煙のように曇っていて、見上げた星空からはしんしんと雪が舞い落ちてきている。

一面白銀世界。

つくづく穏やかなクリスマスイヴだ。

しっかしこんなとこにいるようじゃ、ただ寒いだけだ。

かと言って家に戻る気もしねーし……これからどうしようか。


「ハル君?」


深刻に頭を悩ませていると、突然横から声がした。

特に驚きを見せなかったのは、それがどこかで聞いたことのある声だったからだ。


「あ、こんばんは」


顔を上げるとそこにはナツのおじさんが外灯に照らされ立っていた。

体育祭で一度会ったっきりだったが、この穏やかな笑顔はとても印象的である。


「やっぱりハル君じゃないか。こんなところで何をしているんだい?」


ニヤニヤしながら「さてはこれか?」と小指を立てだすおじさん。

期待に沿えないところ悪いが、はっきりと違うことをと告げれば、


「残念だなぁ」


どの辺が残念なのかは知らんが、そっちこそ何をしているのだろう?
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