seasons.(シーズンズ)【完】
質問してみるとおじさんは笑顔のまま袋の中を見せてきた。

薄暗くてよく見えないが、クリスマス風にデザインされた正方形の箱が入っているのが分かる。

恐らくホールケーキだろう。


「これからウチでクリスマスパーティなんだよ」


クラスメイトとあれだけ騒いだ後に家族でパーティとは、やはりナツはタフな女だな。


「ハル君は家族で何かやらないのかい?」


返す言葉に困った。

クリスマス如きにアイツがパーティなんかしてくれるわけがない。

それどころか誕生日すらまともに祝ってもらった記憶がない。

運動会・発表会・参観日といった学校行事も当たり前のようにスルー。

さっきだってそうだ。

俺への配慮なんて目にもくれずあの男とイチャこきやがって……。

今の俺達の関係を“家族”と呼んでいいのか疑いたくもなる。


「あー、なんていうか、その……」


俺は言葉を濁す。


「もしかして喧嘩でもして家出中かな?」


よく喧嘩するほど仲が良いと聞くが、これの裏を返せば喧嘩しないほど仲が悪いとなる。

俺達にはまさしくこの言葉がにピッタリだ。
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