seasons.(シーズンズ)【完】



「驚いたわよ。おじさんったらケーキと一緒にハルまで持って帰ってくるんだもん」


結局おじさんの厚意を振り払うことなんて無礼はできず、俺はされるがままにナツの家へお邪魔していた。

おばさんの手料理を頂くのは二度目だが、ナツの家にお邪魔するのは今回が始めてだ。

ナツのガサツな雰囲気に引き換え、おばさんもおじさんも気品のあるオーラを纏っているなと体育祭の時に感じてはいたが、家の内装もここまで整っているとは……。

まるで雑誌のカタログのような、理想のマイホーム象とでも言えよう。


「これじゃ朝から晩までハルと過ごしてるようなものね」


確かに。


「お前みんなで遊んでた時、相当食ってたみたいだけど入るのか?」

「おばさんの料理は別腹なの」


こっそり耳打ちすれば、フォークを振りながら答えるナツ。

気持ちは分からないこともない。

味の保障付きでこんな高レベルな料理を振舞われたら、例え満腹状態にあってもまだいけると胃袋の限界に挑みたくなるだろう。

俺は弁えようと分かっていつつも、相変わらず美味な料理の品々に圧倒され、なかなか箸を止めることができなかった。
< 336 / 410 >

この作品をシェア

pagetop