seasons.(シーズンズ)【完】
僕の胸の内を察してか、ほなみはお茶目にウインクしてみせた。

まさか本当に見守っていたというだなんてにわかに信じがたい。

でもこれはつまり僕が屋上から話し掛けていたことは、無駄ではなかったというわけだ。


「あっくんが話し掛けてくれてたの凄く嬉しかった。本当にありがとう。だからあっくん、あなたは冬香ちゃんと幸せになってほしいの」


複雑な心境の僕は「はい」とも「いいえ」とも返すことができなかった。


「冬香ちゃんと私は似てる」


それは紙一重の差すら見付けるのに苦労するくらいそっくりだ。

何も知らない人になら、双子と言い張って騙し通すことも可能だろう。


「外見もあるけど、一番似ているのはそこじゃない」


けどそれはほなみの求めていた答えではなかったらしい。

彼女は首を左右に振って静かに言った。


「あっくんを想う気持ち」

「え?」

「上辺だけじゃ分らないかもしれないけど、冬香ちゃんがあっくんを想う気持ちは私そのものなの。今彼女があっくんのそばにいるのは偶然じゃなくて必然。運命なんだろうなぁ」
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