seasons.(シーズンズ)【完】
「――っ、ほなみ!?」


しかし僕を置いて行ってしまうかのように、みるみる薄れていくほなみの体。

体ごしに背景が透けて見えた時は、もうどうしようもない衝動に駆られた。


「うん。時間だね」


これで本当にさよならだということが分かり、微笑む彼女の健気さに涙の量が増す。

ほなみの体は、既にうっすら輪郭が残っているだけの状態になってしまっていた。

彼女は僕の前から消えてしまおうとしている。

タイムリミットは目前。

こんな時何を言えばいいのだろう?

最後という言葉が脳内で鬱陶しいくらい強調されている。

だからこそ短くても彼女へ伝えたいこと全てが込められた言葉を選んだ。


「ありがとう」


僕がその言葉を言い終わったと同時に、満面の笑みを浮かべていたほなみの姿はなくなっていた。

もう振り向かない。

君が教えてくれた強さを糧にして、これからは前だけを見て生きていく。

ありがとうほなみ。

本当に心からありがとう。
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