seasons.(シーズンズ)【完】
彼女持ちだと分かっていながら、あげる辺りが非常にあざとい。

しかも米澤に許可をもらったというから、女子間の恋愛に対する感性ってなかなか難しい。

どうせ俺は乙女心の理解に苦しむ、彼女いない歴イコール年齢の無い男だ。

口内に名残惜しそうに広がっている甘ったるさに参りながら、自宅の扉を開けようと鍵穴を回して違和感に気付く。

鍵はすでに開けられていた。

もしかしてアイツが――!?


「久しぶりィ~。元気してた?」


案の定そこには足を組んで椅子に腰掛ける、母親の姿があった。

真っ赤に塗られた唇が曲線を描いている。


「久しぶり、じゃねーよ。ずっと顔見せないで何やってたんだ!?」


母さんと顔を合わすのはクリスマス以来だ。

あの日俺がナツの家から戻った時には、男と共に姿を消していたからな。

過去に数日帰って来なかったことは度々あったが、ここまで長期間家を空けることなんて初めてだったから心配していたというのに、のうのうしゃあしゃあと現れやがって。

どうせずっと男と一緒にいたんだろ。
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