seasons.(シーズンズ)【完】
「今日はさァ、アンタに挨拶しに来たのよ……最後の」


……最後?

最後ってなんだ?

母さんはテーブルに置いてあったタバコとライターに手を伸ばした。

副流煙に顔をしかめながら、続きを話す母さんの声に耳を傾ける。


「アタシさ、再婚することにしたの。会ったことあるでしょ?クリスマスだかその辺りにさ」


あのチャラそうな男かよ。明らかに女もてあそんでますってオーラ出てた。

ならお似合いじゃねーか。


「でェ、相手がアンタのことあんまりよく思ってないみたいなのよ。あの時アンタろくに挨拶もしなかったじゃない?ていうか態度めっちゃ悪かったじゃん?だからあの人怒っちゃってェ~……。でもちょうどよかった。そろそろ手放し時かなって思ってたところなのよね。どうせもうすぐ卒業じゃない」


手放し時――その言葉を聞いた瞬間、耳を塞いでしまおうかと思った。

これ以上先の話を聞くことが怖くなったからだ。

だが逃げちゃいけないという意思が、腕の動きを妨げる。


「黙ってたけど今まで何人も再婚しようか考えた人いるのよ。でもみーんなアタシが子持ちなこと気に掛けててさ。アンタが理由で失敗に終ってたの」
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