seasons.(シーズンズ)【完】
そんなこと知らなかった。

コイツにとって俺がいかにお荷物的な存在だったのか思い知らされ、失望感に体中の力が抜ける。


「アタシあの人と結婚するわ。今回ばかりは譲りたくないのよ。つーわけで悪いけどさよならよ」


俺は何も言い返せないまま、糸の緩んだマリオネットのようにへたり込んだ。

なんだよこれ。意味わかんねぇよ。

……やべぇ、泣きそうだ。


「結構資金貯めといてやったんだからね。これでしばらくは生活できるでしょ。有難く受け取りなさい」


そう言われテーブルの上に茶封筒を置かれた。

厚みから察するに大した金額にはなるだろう。

だけどそんなことはどうだっていい。

これは金で片付けられる問題じゃないだろ。


「――……なよ」


ようやく声を発することができた俺はなんとか立ち上がり、


「ふざけんなよ。こんなんで納得するとでも、」

「アタシがアンタくらいの頃にはもう自立してたわよ?」


まるでおかしいのは未熟な俺だと抗議してくるような言いぶりだった。
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