seasons.(シーズンズ)【完】
……にしても本当に大丈夫かしら、ハル。

受験当日までには治ってるといいけど。

ハルのことを気にとめつつも、掃除当番に取り掛かる。

音楽室の掃除は比較的楽な方だけど、ホウキと丸めたプリントで野球をしていた馬鹿男子達のせいでタイムロスしてしまった。

ハルが休んでいなければ、もう少しスムーズに片付いたかもしれないのに。

一緒の班の女子が歯医者やら塾やらがあると言って慌てて帰ってしまったため、教室に戻るべく一人のんびりと廊下を歩いていたら、


「おっ芳賀ァ、いいところに。ちょっといいかァ?」


職員室の前で宮ちゃんに遭遇した。


「何よ宮ちゃん。お説教ならお断りだからね」

「なら喜べ。幸い俺の雷様はご立腹じゃないぞォ」


宮ちゃんは口角を上げ、いやらしく笑いながら手招きしている。

この様子なら本当に説教ではないみたいだけど、少しでも勉強絡みの話だったら即とんずらしてやるわ。

心の中でがっちり宣言し、しぶしぶ職員室へ入る。

滅多に足を踏み入れることのない職員室は、あちらこちらで小さな話し声が聴こえる程度。

廊下で生徒が談笑している声なんて、静かな職員室には筒抜け状態だ。

この空気、あたしにはどうも居心地が悪かった。

眉間にしわを寄せるあたしが連れて来られたのは、奥の応接室。

廊下からは入れず、職員室経由じゃないと踏み入れない部屋ね。

テーブルを挟んで向かい合わせになっている黒いソファーに座るなり、宮ちゃんは深刻な面持ちで口を開いた。

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