seasons.(シーズンズ)【完】



普段通りの授業を終え、大勢の生徒が下校する放課後。

校門を出てすぐ習字セットを置き忘れたことに気付いた私は、慌ててUターンした。
元々掃除当番で帰りが遅くなってしまったせいか、靴箱のなかのほとんどは上履きになっていて、案の定廊下にも人の姿が無かった。

途中隣のクラスの先生とすれ違った時に、早く帰ることを促されたので、怒られない程度に早足になる。
教室の前に着いてドアを開こうとした瞬間、加速していた心臓の動きが止まってしまいそうになった。


「あいつマジ根暗だわ。友達いないから小説ばっか読んでんのー」


僅かな隙間から聞こえた、耳を疑いたくなるような凛ちゃんの声。


「私もこんな恋がしたいなあ、とかほざくんだもん。笑い堪えるの必死だったし」
「お前みたいな幽霊じゃ恋愛自体難しいっての」
「まず相手がいない~、みたいな」


……うそ、私のこと?


「しかもさ“私、凛ちゃんと仲良くできてよかった”とか言われたんですけど」
「マジ鳥肌~」
「幽霊うつっちゃうしょー」
「きゃははは」


私のこと……だよね?
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