seasons.(シーズンズ)【完】
俺が酷くうろたえていると、


「なんとなく察してたの。ハル君の家庭環境は何か複雑なんじゃないかって」

「……え?」

「ハル君の目を見てたら分かるわよ。夏枝ちゃんも同じような目で無いものねだりしてた時期があったから」


おばさんに体を引き寄せられ、心地よい花の香りとともに抱きしめられた。

さっきのナツに似た優しさが、温もりとなり伝わってくる。


「これからは本当の両親だと思って、たくさんたくさん甘えていいんだからね」


おばさんから掛けられた言葉は、求めても決して手に入ることのなかった家族愛が込められている、とっておきだった。

涙の生産が追いついてないせいか泣くことはなかったものの、このままずっとしがみついていたい衝動に駆られる。

ああ、母親ってこういうもんなんだなぁ。

安心感が体中を満たしていくようだった。

これまで俺が母親に甘えられたことがあっただろうか?

血の繋がった家族から大切に思われたことがあっただろうか?


「――ッ、ありがとうございます……!」


おばさんを抱き締め返し、しぼり出したような声で告げる。

家族という存在がこんなにも温かいものだったなんて知らなかった。
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