seasons.(シーズンズ)【完】
spring.

輝ける春

*秋人side 


真っ白な世界を作り出していた雪が溶け切った頃、僕達は高校受験に臨んでいた。

静寂の中ペンを進める音だけが聞こえる空間は、普段行っているテストとはなんら変わりはない。

だがその先に見える結果がこれからの人生を左右するとなれば話は違う。

ライバル達はみんな緊迫したムードに体を強張らせていた。

こういう時は変に意識しないでリラックスした方が良いんですけどね。

そうもいかないのが現実です。

現に僕も手汗が滲み出てきていますし。

落ち着いて臨もうと思ってはいたのですが、どうやら緊張がうつってしまったみたいですね。

でも僕は負けるつもりはありませんよ。

当然ですがここはフェアに、手加減無しの全力発揮で勝負です。

……ほなみ、見ててくれていますか?

僕は君に医者になると誓いましたね。

あの言葉に嘘はありません。

今はそのための第一歩を踏もうとしています。

どうか見守っていてください。

必ず偉大な医者になってみせますから。

その時こそ、心から君に笑い掛けられると思うのです。

窓越しに見上げた空は穏やかで、心なしか微笑んでいるように見えた。
< 386 / 410 >

この作品をシェア

pagetop