seasons.(シーズンズ)【完】
*冬香side


高校受験も無事に終え、とうとうこの日がやってきてしまった。

桜が咲き誇る並木道の先に建つ東雲中学校。

正面玄関には“卒業式”の文字が書かれた看板。

そう、今日は私達がこの学校を卒業してみんなとお別れをする日。

校歌斉唱では、体育館内に鼻声混じりの合唱が響き渡る。

こうしてこの校歌を歌うことも最後なんだと思うと、周囲に釣られて泣いてしまいそう。

三年生になるまでは学校なんてつまんなくて嫌いだった。

けど夏枝ちゃんと出会って私は変われた。

いつしか学校が大好きになっていた。

うん。私、泣かない。

大好きだからこそ泣いてお別れなんて嫌だ。

ありがとうの気持ちを込めて、笑ってさよならしたいもん。

卒業証書を授与され、校長先生が式辞を始めた頃には泣き出す女子がちらほら出てきて、退場時には先生や後輩までもらい泣きして、式場はしんみりしたムードに包まれていた。

祝福の式なのに、こんなに悲しい思いしなきゃいけないなんて不本意だなぁ。

でもそれだけこの学校に情が移ってるってことかも。

夏枝ちゃんと仲良くなって、あっくんと恋をして、この学校は私を色々な人と出会わせてくれたね。

そして色々なことを学んで強くなれた。

私、東雲中学校の卒業生として恥の無いよう立派な大人になるため頑張る。

だから、これからもちゃんと見ていてね?
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