seasons.(シーズンズ)【完】



感動のホームルームの後、在校生に見送られた卒業生らは、余韻に浸りつつカメラ片手にあちらこちらを回っていた。

みんな先生や友達と校舎を背景にして、思い出作りに夢中だ。

中には好きな彼から第二ボタンを貰うため戸惑っている、可愛らしい女子の姿もある。

逆にボタンをねだられないかと変な期待をしている男子の姿もある。

無論シゲのことである。


「うわ、あいつボタンいっこもねーの。けっ、モテる男はいいねぇ~」


シゲが唇を尖らせてぼやいた。

そんなに羨ましいもんなのか。

お下がりとかあげなきゃいけない奴にしてみればいい迷惑だと思うが……。

俺には理解できんが、シゲなりのロマンというものなのかもしれないな。


「ハルー!」


名前を呼ばれた方を振り返ると、向こうからナツが走ってきていた。


「ちょっと来なさい」


俺のもとへ着くなり、強引に腕を引っ張ってくるナツ。

またコイツは毎度行動を起こすのが唐突すぎるんだよ。

一体俺をどこへ拉致るつもりなんだ。

まさかコイツに限って「ボタンちょうだい」とかぬかすんじゃないだろうな。
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