seasons.(シーズンズ)【完】
「こっちも本気で仲良くしてあげてるって思い込んでるのかな、あの幽霊女」


ガラ、と力無くドアを開ける。
すると凛ちゃんと数人の女の子達が、唖然とした表情をこちらに向けてきた。

視界が揺れる。
唇が震える。
足が竦む。
不安定な私は重く心に圧し掛かってくる現実に、へたり込んでしまいそうになった。


「冬香ちゃんどうしたの?」


机に腰掛けていた凛ちゃんが、すとっと床に足を着いて訊ねてくる。
まるで何事もなかったかのような平然な振る舞い。
さっきのが幻聴でないことを確信している私には、その姿が酷く愚かなものに見えた。


「習字セット、取りに……」


本当は、知らないフリをしていたかった。
そうすればこの日常が壊れることもなかった。
そうじゃなくても、もう少し持ち堪えることは叶ったかもしれないのに。
けれどそうであることを望めば望むほど、先程の会話が脳内でしつこいくらいにリフレインされて、現実から目を背けようとする私を叱るのだ。
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