seasons.(シーズンズ)【完】
「そっかー。はい、これでしょ?」


凛ちゃんは私の机の横に掛かっていた赤い習字セットを手にすると、偽りの笑顔を貼り付けたまま駆け寄ってきた。
どうして笑ってるの?
その笑顔も取り繕いのものだったってこと、知っちゃったんだよ、私。


「……思い、込んでたよ」
「え?」
「凛ちゃんも、同じ気持ちで仲良くしてくれてるんだって……私、思い込んでたよ」
「何のこと?」


初めは天使のように思っていたその笑顔が、こんなにも憎く感じる日がくるなんて考えてもいなかったな。
奥歯を噛み締めながら、目の前で首を傾げている凛ちゃんに強い眼差しを向ける。


「とぼけたってもう遅いよ。……今の、聞いてたから」


凛ちゃんの眉間が微動した。
私の前で本性を現すのも時間の問題だろう。

せっかく手に入れた理想を自ら崩壊へ導くのは、意気地なしな私にとってかなりの勇気と覚悟が必要なことだった。
それでもこの一件を見なかったことにして、これからも凛ちゃんと仮初めの付き合い続けていく度胸がない私には、前者を選択するしかなかったのだ。
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