seasons.(シーズンズ)【完】
*春輝side


「次のテストって原子記号の周期表出るのよねぇ」


理科の実習中、隣の席でナツがいかにもダルそうにぼやいた。
気持ちは分かるが、かと言って堂々と赤点とって補習になるのはごめんだしな。

幸い俺は転入前の中学で化学変化や原子と分子がどうのこうのという分野は、かじる程度ではあるが習っていた。
少し有利な立場に置かれていることに、つまらない優越感を感じてしまう。


「あたし暗記物苦手なのよ。そういえばこれ何かいい覚え方あったわよね。ねえ、ハル知らないかしら?」
「聞いたことあるな」


以前習った時に白衣の似合うじいさん教師がノリノリで話していたっけ。
うろ覚えで正直自信はないが。
ちょっぴりいやらしいバージョンもあるんだぞ、なんて思春期男子の好奇心を煽っていたじいさんの楽しそうな顔を思い出しながら、オーソドックスな方を口にしてみる。


「確か水兵リーベ僕の船、七曲がりシップルなんたらかんたら~……」
「水兵リーベ僕の船、七曲がりシップスクラークか、閣下スコッチバクローマン、鉄子にどうせ会えんが、ゲルマン斡旋ブローカー……だったかな?」
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