seasons.(シーズンズ)【完】
なんの前触れもなく耳に流れ込んできた、ゲームに登場する最上級魔法の呪文を聞いているような錯覚に陥る長文。
発した主は前髪を短く切りそろえたての米澤だった。


「冬香、なんなの今の?」
「周期表の覚え方だよ?後半はバリエーション豊富だから人によってバラつきもあるんだけどね」
「アンタよくそんなの覚えてるわねぇ」
「昔読んだ本に書いてあったのを偶然覚えてただけだよ」


偶然でここまで覚えているのなら上等だろう。
米澤なら円周率の小数点以下だって、どうせ役に立たないと分かっていてもスラスラと言えるようになりそうだ。


「それで何だって?メモるからもう一度ゆっくりお願いできるかしら」
「いいよ」


ナツの隣に移動して、また呪文を唱え始める米澤。
やっぱり、というかなんというか、読書好きのキャラクターは頭がいいと相場が決まっているもんだよな、うん。


「なあなあ、BTB液ってカクテルみたいでウマそうじゃね?」


と教科書を指差しながら陽気に近付いて来たのはシゲだ。
飲みたきゃ好きなだけ飲むがいい。
化学反応が奇跡を起こして馬鹿が治るかもしれない。
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