seasons.(シーズンズ)【完】
「後で冬香と加奈も来ていいからねー」
「うん。ありがとう」
「お邪魔するよ~」
「ナっちゃんオレは?」
「んー、金沢は駄目」
「ぎゃふん。傷付くし」
「あはは傷付け傷付け~」


違和感を抱いたものの、タイミングを逃して聞きそびれちまった。
というよりこういう複雑な家庭事情って元々訊きにくいよな。異性だと余計に。

そうして流されるがまま俺と進藤は、恐れ多くもナツ宅のお昼にお邪魔させていただくことにした。


「あらいらっしゃい」
「さあ、上がった上がった」


俺達を迎えてくれたのは40代くらいの優しげなおばさんとおじさん。
パッと見、オシドリ夫婦ってところか。


「おばさん気合入れて作りすぎちゃったから助かるわ」


結構いるよな、こういう保護者。


「紹介するわね。こちらのメガネをかけた男の子がクラスで委員長を務めている進藤秋人くんで、そっちのがハル」


進藤に五本の指先を向けた後、俺を人差し指でさしたナツ。
紹介の仕方にも贔屓の差が歴然だな。
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