seasons.(シーズンズ)【完】
「君達が夏枝と仲良くしてくれている男の子か。夏枝がお世話になっているね」
「夏枝ちゃんから話は聞いてるわ。この子ったらすごく楽しそうにあなた達のこと話すのよ」
「もー、おじさんもおばさんっも余計なこと言わないでよね」


いつもはこちらが受け身なせいか、困ったように照れるナツが妙に新鮮に見える。


「おばさんのお弁当美味しいのよ。ほら、二人とも遠慮せずに食べた食べたっ!」


促されてまず最初に口に運んだ玉子焼きをはじめ、ナツの言った通りおばさんの料理はどれも絶品だった。
とにかく美味いの一言に限る。
きっと隠し味があるに違いない。


「ありがとう。そう言ってもらえると頑張って作った甲斐があったものだわ」


背景にパステルカラーの花々を咲かせたくなるような、ふわりとした笑顔。
歳の差はあるが、それでも実に魅力的だ。


「夏枝、さっきの徒競走すごかったな」
「そうよねぇ。スタートからずっと一位なんだもの」
「えっへ~ん。あたし足の速さは誰にも譲りたくないからね」
「えらい!プライドを持つのは良いことだぞ!」


さぞかし喜ばしそうにナツの頭をクシャクシャと撫でるおじさん。
そのせいでせっかくセットされていたポニーテールは、ゴムが緩んできたのか段々と形を崩していった。
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