君と夢見るエクスプレス
彼が、橘さんが来てからだ。
いろんなペースが崩れ始めたのは。
急に業務が慌ただしくなったのも、姫野さんの様子がおかしくなったのも。
週一しか出社しないなら、メンバーに加わる必要なんてなかったんじゃないの?
今こうして関係者が集まって会議してるのに、参加もしないのなら。
次々と疑問が浮かんでは消えていく。
その影でちらほらと映るのは、茜口駅で見た橘さん。意外にも似合っていた制服姿と、きちんとした接客態度。
おまけに、私に口止めした時の意地悪な顔まで浮かんできて……
こんなところで、思い出したくなんかない。
もう、早く消えてよ。
と念じる私の隣りでは、姫野さんがひとりで他部門の担当者ら十人相手に話し続けている。
時おり他部門の担当者が手を挙げて口を挟もうとするけど、姫野さんに「ご質問は後で」とぴしゃりとねじ伏せられてしまう。
他部門の担当者らは言い包められまいと、何とか抵抗しようとしているようだけど。姫野さんの方が、一枚上手のような気がする。