君と夢見るエクスプレス
実は企画開発室と他部門との考え方には、ずいぶん前から溝ができているらしい。私が企画開発室に異動してくる以前から。
他部門からは土地を住宅用地として売却し、手放そうという案がちらほらと出始めていた。
しかし企画開発室では土地を手放さず、商業関連の企業を誘致しようという方向性で進めている。商業関連といっても、具体的に何か決まったわけではないけれど。
熱く語る姫野さんに気付かれないように、会議室の壁に掲げられた時計を見上げた。もう間もなく、あと五分も経たないうちに定時のチャイムが鳴る。
会議の終了予定時刻は、とうに過ぎている。当初の予定では三十分前には終わっているはずなのに、誰もが議論に夢中になって時間を忘れている。
お昼休み、美波に食事に行こうと言ったことが悔やまれる。
美波は待っていてくれてるだろうか、もう諦めているだろうか。それとも最初から、ダメだと思われていたなら悲しい。
美波には『定時で帰れそうなら連絡する』と言ってしまったたけれど、こんな所に居たら連絡することもできない。