君と夢見るエクスプレス
急いで立ち上がり、笠子主任から資料を受け取った。焦ってしまって、半ば奪い取るような動きになる。
今の私、すごく感じ悪い風に映ったんじゃないだろうか。
早速、後悔が込み上げてくる。
「会議、長引きそうだね」
それなのに笠子主任は心配そうな顔で、優しく声をかけてくれた。私のことを心配してくれてるんじゃないかと、勘違いしそうになってしまう。
「はい、もう少し掛かりそうです」
「女の子なのに、毎日遅くまでしんどいよね。姫野君も気遣ってあげたらいいのに……」
『女の子なのに』という言葉に少し引っ掛かりを覚えながらも、相変わらずの笠子主任の気遣いが嬉しい。
そうでしょう? と言いそうになってしまうのを堪えて、
「ありがとうございます、たぶん今が一番忙しい時なんだと思います」
と答えて笑った。
『松浦さんは偉いね』なんて言葉を期待しながら。
ああ、私はなんて馬鹿なんだろう。