君と夢見るエクスプレス
「姫野君が戻ったら、今日は早く帰るように声を掛けるよ。今週は忙しかったから疲れただろ?」
そんな気遣いさえも嬉しくて、舞い上がってしまいそうになる。やっぱり優しくて、好きなのかもしれない。
改めて実感させられてしまいそう。
もし笠子主任が結婚していなかったら、妻子持ちじゃなかったら、本気で好きになってしまっていたかもしれない。
いや、絶対になっていたはずだ。
「本当に、ありがとうございます。助かります」
「いいんだよ、松浦さんが倒れたりしたら大変だからね」
いやいやいや……、もうそれ以上は言わないで。そんな気もないのに、そんなこと言われたら。本気でヤバいから。
胸の奥がぐらぐらと揺れて、何か込み上げてくるような感覚。
私、本気で好きになってしまうかもしれない。
「引き留めてごめん。これ、早く持って行かないと姫野君が待ってるだろ?」
現実からフェードアウトしてしまいそうだった私を、笠子主任が呼び戻す。
「すみません、ありがとうございました」
込み上げてくる焦りを抑え込みながら、私は会議室へと走った。