君と夢見るエクスプレス
笠子主任に対する反発ではなくて、姫野さん自身が立てた段取りを崩されたことに対する苛立ち。
「わかった、じゃあ議事録ができたら今日は帰ること。僕も今日は早く帰りたいから」
姫野さんの気持ちを察したのか、笠子主任は柔らかな声で諭すように言った。部下が残業しているのに、上司が先に退社するわけにもいかない。
真意を悟った姫野さんが、大きく頷く。
「わかりました、急いで仕上げます」
「ありがとう、頼んだよ」
笠子主任もにっこりと頷き返して、会議室の片付けを手伝い始めた。三人なら、片付けはすぐに終わってしまう。
それから事務所に戻り、姫野さんと一緒に大急ぎで議事録の作成に取りかかった。
会議中、姫野さんはパソコンの操作と話すことに夢中だったから、ICレコーダーと私の手書きのメモが頼り。
自分の殴り書きを見られるのは恥ずかしいけれど、最近ようやく慣れてきた。それよりも殴り書きを解読する方が難しくて、悪戦苦闘してしまう。