君と夢見るエクスプレス
思い出してしまったら、顔が熱を帯びてくる。情けなくて恥ずかしくて、赤くなる顔を伏せながら彼を窺った。
すると、彼も笑うのをやめて。
何だか慌てた様子。
「あれぐらい言わないと、絶対に話すだろうと思ったから……、あ?」
ふと、彼が声を上げた。
笑みの消えた顔を引きつらせて、私を凝視する。豹変ぶりに、ただならぬ予感。
ここではない記憶へと手を伸ばす彼の表情が変わっていく。変わったと気づいた時には、すっかり険しさを増している。
「さっき……、話したね? 彼女に」
ついには声色まで変えて、彼が迫ってくる。表情と雰囲気に圧倒されて、私は後退るだけ。
「えっ……?」
「言ったよね?」
「私は、何も……」
ぐいぐい迫る彼に圧されるまま、背中がホームの壁に当たった。肩に触れた彼の手と、意地悪な笑み。
「お仕置き、しようか?」
ざわっと胸が震え出す。
嘘つき!
冗談って言ったのに?
目を閉じて、歯を食いしばった。
もう、そうするしかない。
「ご飯、食べに行こう」
ふわりとした声とともに、漏れた息が耳を掠める。
目を開けるより早く、彼が歩き出す。
私の手を固く握り締めて。