君と夢見るエクスプレス
彼はずんずんと私の知らない路地へと入っていく。見たことない景色に目を奪われていると、彼が足を止めた。
「ここ、来たことある?」
と言われて最初に目に飛び込んだのは、居酒屋の大きな暖簾と提灯。その隣には、さらに上回る大き過ぎるほどの木の看板が立っている。
看板には『お好み焼き』の大きな文字。寄り添うように書かれた店の名前は、あまりにも達筆過ぎて読めない。
だけど、肝心なものが見当たらない。
入り口はどこ?
すると察したのか、彼がそびえ立つ看板の裏を指差した。
「こっちが入り口、気をつけて」
と言って、頭を垂れる。
大きな看板の横は低いアーチ状になっていて、腰を屈めなければ通ることができないほど低い。
彼のあとに続いて潜り抜けて、頭を上げると分厚い木の自動ドアが開いた。
深みのあるオレンジ色の灯りが、ぱっと目に飛び込んでくる。
きらきらと輝きを放つのは、足元に敷かれた真っ白な玉砂利。点々と配置された飛び石を進んでいった先には、障子で仕切られた個室がいくつも並んでいる。