君と夢見るエクスプレス
それから、もう一つ。
実家から近いのに一人暮らししてるなんて、家族と確執でもあるのかと勘ぐってしまう。
これは尋ねていいものか、尋ねるべきではないのか。などと悩んでいるうちに、先に口を開いたのは彼。
「ところで、松浦さんは? 彼氏居るの?」
いきなり、何の質問?
私の地元を尋ねているのかと思ったけど、そうでもないようにも聴こえるし。どちらを先に答えればいいのか、正直わからない。
「私は大学の時に出てきたから、地元はここじゃないよ」
わからないなりにも、とりあえず答えた。
もちろん、彼氏のことはスルー。
だって橘さんに、答える筋合いなんてない。
「ふうん、彼氏は? いないの?」
それなのに橘さんは、なかなかしつこく尋ねてくる。この調子なら、きっと私が答えるまで尋ね続けるに違いない。
「居たら、橘さんと食事なんて行きませんから」
至って正直ベースな答え。
我ながら的確な答えだ。
これで、橘さんだって満足したはず。
すっかり安心して、ビールを流し込む。
ほっと息を吐いたのに、未だに視線は注がれているまま。橘さんは、まだ私から目を逸らさない。