君と夢見るエクスプレス
「俺のことが必要になったら、いつでも言ってよ。松浦さんとは縁を感じるんだ」
またまた、何を言い出すのか。
早くも酔っぱらっているのだろうか。
「縁かな……、橘さん、もう酔っぱらってる?」
「いや、酔ってないよ。あの時、松浦さんが俺の背中を押してくれたことに感謝してるんだよ」
橘さんは目を伏せて、緩やかに口角を上げる。微笑んでいるようにも、恥じらっているようにも見える表情。
酔ってないと言ったけど、やっぱり怪しい。
「何のこと?」
「ちょうど進路に迷ってる時で、松浦さんが居たから決意できたんだ」
「そんなこと言われても、あの時は橘さんが居ることも知らなかったし、何にも話してないじゃない」
「直接話してないけど、彼氏と話してる声が聴こえたんだよ。夢を語る松浦さんの楽しそうな声、笑顔がきらきらと輝いてたよ」
うっとりとした目で、彼が私を見てる。
当時の記憶へと思いを馳せているのがわるけど、私は聞いてるだけで恥ずかしい。
それに彼の見間違いという可能性も、まだ拭えない。本当に私のことを言ってるのか、確信もないのだし。