君と夢見るエクスプレス

「え? どうして私が居たからなの?」
「だから……、松浦さんが居たから驚いたんだよ」



と言うと、橘さんは立ち上がった。口を尖らせて、ふいと顔を逸らしてしまう仕草はまるで拗ねた子供のよう。



やっぱり、あり得ない。
ちょっと往生際が悪すぎ、まだこの期に及んで、私のせいにするなんて。



こんな人なのに、ほんの少しでも揺らいでしまった自分が情けなくなってきた。胸の奥の揺らぎが、じんわりとした熱が、いつしか炎を上げ始める。



「何言ってるの? 私が悪いの? ねえ、私が橘さんに何かした?」



怒りの炎を吐き出すように、一気にまくし立てた。



隣りの個室に声が漏れ聞こえたかもしれないけど、気にするものか。隣りの個室からも、大きな笑い声が聴こえてくるからお互い様。



彼は答えず背を向けたまま、後頭部を手で摩ってる。気まずくなったこの場を離れて、トイレにでも逃げ込むつもりか。



だったら、どこまでも追撃してやろうかしら。自分の失敗を私のせいにするなんて、許せないんだから。






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