君と夢見るエクスプレス

私の体を抱いた腕は、かけた手に力を入れたぐらいじゃ解けそうにない。それでも、この状況に甘んじるものか。



「離してよ、もういいから……っ」



左右に大きく捻じる体の動きを、彼の腕が強く押さえつけた。



「俺がよくない、ちゃんと話すから聞いて」



声とともに漏れた息が、髪をふわりとくすぐる。



次第に増していく息苦しさは、彼の体がもたれ掛かってくるからか。それとも彼の腕が、私を強く抱き締めるからか。



「早く言って……、離してよ」



彼が息を吸い込んだのがわかった。ひと呼吸おいて、



「松浦さんが目の前にいたから緊張してたんだよ、頭の中が真っ白になって……、恥ずかしかったんだ」



と、彼は掠れるような声で言った。



もたれ掛かってくる彼の体から、胸の鼓動がより大きく、速さを増して響いてくる。



それを悟られぬように気にしているのか、私が何か言い返すのを拒んでいるのか、彼がいっそう腕に力を込めた。


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