君と夢見るエクスプレス
「ずっと、松浦さんに会いたかった」
彼の吐き出した言葉の衝撃と腕の強さに堪えられなくなって、思わず顔を上げた。
私の鼻先に触れたのは、彼の頬。
とっさに顔を背けて新鮮な空気を吸い込んだ瞬間、唇を塞がれた。柔らかな感触が強引に唇を割って、さらに奥へと入り込んでくる。
突き放そうとする私の腕は、しっかりと彼に握られて。余計な声を上げてしまわないようにと必死になるほど、息苦しさは増していくばかり。
彼の腕の中、やがて体から力が抜けていく。意図しないのに崩れ落ちてしまう私を抱き留めて、彼の唇がゆっくりと離れていった。
こんな所で、何のつもり?
本当なら今すぐ詰め寄りたいのに、力が抜けて声にならない。上がった息を少しでも早く整えようとして、必死になってる自分自身が恥ずかしくて堪らない。
見ないで、と言いたい唇が震えてしまう。そんな私を見下ろして、彼が口角を上げた。
「やっぱり可愛い、ビビってるところもいいね」
笑みを含んだ彼の声に、ぞわっと体が震えてしまう。
見ないでよ!
睨みつけてから目を逸らしたのに、しつこく私の顔を覗き込む。面白がるように微笑みながら。